荘子とアリスとセイウチの旅。ま、今回も、荘子です。 『MATRIX』と、荘子なんですが・・・『マトリックス』の冒頭で「白いウサギ」が登場します。 The Matrix - Follow the White Rabbit. . . http://www.youtube.com/watch?v=Smwrw4sNCxE “Follow the white rabbit.” "You ever have that feeling where you are not sure if you're awake or still dreaming?" →『起きてるのかまだ夢をみてるのかはっきりしない感覚って味わったことないか?』 あれの元が「不思議の国のアリス」だってのは、すぐに分かると思うんですが「荘子」と「アリス」の相性の良さってのが面白いかなということで“I Am the Walrus”と荘子 その2です。 参照:“Glass Onion” と荘子。 http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5035 “I Am the Walrus”と荘子。 http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5037 ビートルズの“Let it be"というのが、東洋思想である、というのは日本人にはすぐにわかると思うんです。彼らが東洋思想に興味を持っていたのを知っている人は多いんですが、ほとんどのビートルズ本で紹介されているのは、インドどまりなんですよ。しかし、特にジョン・レノンの場合には、日本人になじみの深い、荘子と禅からの引用が非常に多いんです。それは、ユングであったり、鈴木大拙さんであったり、もちろん、オノ・ヨーコの影響でもあるのでしょうが、ジョンの詩は荘子を読むとはっきりと分かるんです。 てなわけで『マジカル・ミステリー・ツアー』の中のセイウチ(walrus)です。 「百年は楽しめる」とジョンが言っていた、このセイウチのなぞなぞの鍵が「アリス」です 参照:Carroll, Lewis .Through the Looking-Glass and What Alice Found There http://etext.virginia.edu/toc/modeng/public/CarGlas.html “Walrus"というのが、 『鏡の国のアリス』のセイウチと大工であるというのは、ファンの間では知られています。しかし、そこまでで終わっていて、だれもその先を解いていない。しかし、荘子を通すと続きがちゃんと見えるんです。世界中で誰も解いていないものが解けたんですよ。 参照:YouTubeAlice in Wonderland - The Walrus and the Carpenter http://www.youtube.com/watch?v=TvOThKOJdas キーワードは『鏡の国のアリス』の最終章のタイトル“Which Dreamed It? ”・・すなわちここで胡蝶の夢に飛ぶんです。(莊周夢蝶"The butterfly dream")。 『荘子』という書物には、“walus"も“carpenter"も登場します。“glass onion”のヒントとして登場しているのは、車輪を作る輪扁という職人だろうと思われます。聖人の書物は「古人の糟粕」であると言い放った人です。『荘子』の「天道 第十三」にあります。 そして、もう一方の“walrus"・・・紀元前の中国人が「セイウチ」という生物を知っていたわけではありません。しかし『荘子』という書物には“walrus"が出てくるんですよ。 The walrus {69} envies the centipede; the centipede envies the snake; the snake envies the wind; the wind envies the eye; and the eye envies the mind. The walrus said to the centipede, "I hop about on one leg but not very successfully. How do you manage all those legs you have?" 以上 Chuang Tzu Lin Yutang, Translator より引用 http://www.personaltao.com/tao/chuang_tzu.htm これは、『荘子』の「秋水 第十七」の英訳です。 『キ憐玄、玄憐蛇、蛇憐風、風憐目、目憐心。キ謂玄曰「吾以一足而行、予無如矣。今子之使萬足、獨奈何」』『荘子』(秋水 第十七) →キという化け物はムカデを羨み、ムカデはヘビを羨み、ヘビは風を羨み、目は心を羨むものである。キという化け物はムカデに言った。「私は一本足でぴょんぴょん歩くことしかないけれど、ムカデさんはそんなに足がいっぱいあって羨ましいな。さぞ便利なんでしょうね。」 ・・日本の童話「ねずみの嫁入り」の元ネタだと思われるこの寓話に登場する、一本足の妖怪「キ(中国語読みはkui)」を、英訳するに際して“walrus"としたんです。 漢字ではこう書くんですが、この「キ(kui)」=セイウチ(walrus)なんですよ。 あんまり似てはいないんですが、セイウチって一本足でしょ? 正確な答えはもう一度“Follow the white rabbit.”の方がよろしいかと思われます。ジョン・レノンが「僕はセイウチ」という意味がちゃんと見えてきます。 いや、面倒くさい人は、こちらで↓↓どうぞ。 参照:Kui (Chinese mythology) http://en.wikipedia.org/wiki/Kui_(Chinese_mythology) で、もう一つ。 この「ウォラス」を生まれて初めて聴いたのは中学のころだったと思うんですが、鮮烈だったのがこの曲のストリングスです。なんだか得体の知れない感動を覚えたんです。今考えてみると何のことはない。この曲のストリングスって東洋音階なんですよ。しかも、インドじゃなくて中国の。分かりやすい例でいうと「蛍の光」ってスコットランドの民謡ですよね?「遠き山に日は落ちて」はドボルザークの「新世界より」ですよね?でも、日本人には日本の曲のようにしか聴こえない。これは、構造が東洋音階と同じだからです。無性に懐かしさを感じてしまうことになるんです。 はっきりと感じるのは琉球の音楽だと思われます。 参照:てぃんさぐぬ花 http://www.youtube.com/watch?v=TBhJ4Ir6Q2A&feature=related ヤマトのものだと「ヨナ抜き」ってヤツです。ドレミファソラシドのうち、ファとシがない。この5音階の曲については、日本人は無意識のうちに反応するんです。これを意図的に使われると文句が言えないんですよ。たとえば久石譲の「菊次郎の夏」とか、日本で一番上手く使っているのはやはり教授の「戦場のメリークリスマス」だと思われますが・・・戦メリって、前半が東洋音階で、その後に西洋音階を使っていますよね。 で、教授のこれ↓↓を聴いて、 http://www.youtube.com/watch?v=1r2a0WsBjSc&feature=related 荘子の、 「?且彼方??泉而登大皇,無南無北,?然四解,淪於不測;無東無西,始於玄冥,反於大通。子乃規規然而求之以察,索之以辯,是直用管窺天,用錐指地也,不亦小乎。」(『荘子』秋水 第十七) →荘子はすでに地泉を踏み越えて大空までも目指している。南でもなく北でもなく爽やかに世界と溶け込み、東でもなく、西でもない、真っ暗な世界の始まりから、大いなる自然の営みと共にあるのだ。ところがあなたは、ちまちまとした分析で彼を推し量ろうとし、つまらない理屈で彼を追いかけている。その様は、小さな穴から空を覗いたり、錐を刺し込んで地の深さを測るようなものだ。なんとちっぽけな了見だろう。 「小さな穴から空を覗いたり、錐を刺し込んで地の深さを測るようなものだ。なんとちっぽけな了見だろう。」 これを読んで、 ↓↓これをお聴きください↓↓ The Beatles I am the Walrus http://www.youtube.com/watch?v=0yNcE8c3j2M ジョンが荘子を愛したのが分かるんです。 ま、まだこの頃は、 “But if you go carrying pictures of chairman Mao You ain't going to make it with anyone anyhow.” ですからね。 The Beatles - Revolution (Live) http://www.youtube.com/watch?v=Imb4tYOk8GE 霸王別姫 17 http://www.youtube.com/watch?v=kugiehmAoaE&feature=related 彼は、行きたかったんですよ。 John Lennon - Meat City http://www.youtube.com/watch?v=1yXSU7nkvzE “Well I'm gonna China to see for myself Well I'm gonna China to see for myself Gonna China gonna ... Just got to give me some rock 'n roll ” 蝶よ蝶よ唐土の俳諧問はん 芭蕉 今日はこの辺で。 |